溝口敦はノンフィクション中心のライターです。手がける分野は主に社会畑ですが、カバー範囲は広く、山口組、ヤクザ、暴力団、組織犯罪集団、外国人マフィア、人物論、新宗教、科学、食品の安全性、性、小説など多岐にわたっています。発表メディアは主に週刊誌、月刊誌、単行本です。


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溝口敦の斬り込み時評(日刊ゲンダイ、毎週月曜連載)

69)逆効果 暴排条例でヤクザはさらに先鋭化(12年2月13日)

 最近、関東の暴力団幹部からじっくり話を聞く機会があった。総体的には雑談に類することだが、話の中に、なるほどプロはこう判断するのか、と驚いた一事がある。

 そのときの話題は暴排条例施行後、福岡で頻発している建設業者や住民に向けたカチコミや射殺事件についてだった。住民や企業を敵に回す福岡の事件では、他の暴力団も迷惑しているといった感想が幹部の口から出るものと思っていたが、幹部は予想に反し、こう言った。

「最近思うのだが、福岡の組織はわれわれの社会全体のことを考えて、ああいう激しい事件をやってくれているのではないか、ということだ。

 暴排条例で『ヤクザにミカジメ料を出すな。出したら、出した業者の名前を公表し、罰する』といったところで、出さなければヤクザに殺されるとなったら、業者はダメージも覚悟の上、警察に証拠を掴まれないよう苦心に苦心を重ねてヤクザにカネを払う。

 このことを業者に知らしめるため、ああいう激しい事件を起こしているんじゃないか。事件による利益はヤクザ社会全体が受け取る。我々は福岡の組織に足を向けちゃ寝られないわけだ」

 みかじめ料を払わない業者は殺す。もちろん殺した業者からはみかじめを取れない。が、周りの同業者は殺しの頻発に怖じ気をふるう。カネを払わなければ俺も殺されると恐怖に駆られ、なんとしてでも暴力団に払おうとする。

 慄然とする。建設や飲食業者は暴力団に食われるか、それとも殺されるか、絶体絶命の決断を迫られる。暴力団もまた生き残るため、カタギを殺すことをためらわない。暴力団から情報を取れない警察は事件を解明できず、迷宮入りのまま放置する。

 暴排条例の施行でこういうギリギリせっぱ詰まった状況が生まれた。これまで暴力団はカタギのダンベ(旦那衆)に可愛がられてナンボだったが、今やダンベを殺してでもカネがほしい。完全にマフィアへの変質であり、ヤクザの住民の敵、公共の敵への脱皮である。

 長期的に見れば、暴排条例により住民や企業と暴力団は対立を深め、住民側におびただしい血を流させる。こういう犠牲を数多く出して初めて、警察は暴力団の存在を認める暴対法を改め、暴力団を非合法化する。

 ヤクザがカタギに迷惑を掛けないなどはすでに昔話。福岡で始まっている暴力団による住民殺し、業者殺しがほどなく全国に広がる危険性は高い。その間終始、警察は無能、無策を続けて、事件の発生を抑止できない。



68)犯罪の裏にヤクザ…の発想は間違っている(12年2月6日)
67)あえて言う! 暴排条例の廃止はおかしい(12年1月30日)
66)もう犠牲者が出た暴排条例の欠陥(12年1月23日)
65)吉本興業 島田紳助復帰に怪しい元警察官をリクルート(12年1月16日)
64)相場の半分でケリがついた住吉会と山口組のキャバクラ事件(11年12月26日)
63)六本木のキャバクラ、ビール瓶殴打事件の真相(11年12月19日)
62)吉幾三「お咎めなし」と暴排条例の空洞化(11年12月12日)
61)ヤマト運輸の「荷受け拒否」に暴力団が怒りの訴訟(11年12月5日)
60)後を絶たないギャンブル狂のために今こそ、公営カジノを(11年11月28日)
59)暴排条例は違憲だ。だから警察官僚は逃げている(11年11月21日)
58)カマシの弘道会もさすがに今度は分が悪い(11年11月14日)
57)北島三郎と渡哲也の決定的な違い(11年11月7日)
56)もう衝突した「信教の自由」と暴排条例(11年10月31日)
55)警視庁が年内に狙う有名「準芸能人」(11年10月24日)
54)屁のツッパリにもならない暴対法の改正案(11年10月17日)
53)フツーの人々がどうやって暴力団を拒否できるのか(11年10月3日)
52)暴力団排除を住民の自主判断に任せるずるさ(11年9月27日)
(紳助集中連載7)芸能人は誰がセーフで誰がアウトか(11年9月16日)
(紳助集中連載2)決定打はオバマの大統領令だ(11年9月12日)
51)暴力団というブラックホールに吸い込まれた紳助の運命(11年9月5日)
50)ヤクザを選んだ紳助がこれから歩む茨の道(11年8月30日)
49)飲食店の従業員がハマるヤミ金の恐ろしさ(11年8月22日)
48)山口組も海外シフト…は冗談とは言い切れない(11年8月15日)
47)「日本政府も東京電力も二度と過ちを繰り返しません」と石碑に書け(11年8月8日)
46)福島原発敷地内に深さ1キロ以上の穴を掘れ(11年8月2日)
45)裁判所はもう警察・検察の言いなりにならない(11年7月25日)
44)出てこない6億円は山口組が補償するのか
43)飛ばし過ぎ、大マスコミの臓器移植事件報道
42)ヤクザには大震災は千載一遇のシノギのチャンス
41)昔のヤクザはすべての電話番号を覚えていた
40)核廃棄物のトイレがない日本の前途は糞詰まりの悶死(11年6月13日)
39)実行犯2人が捕まっても6億円事件は謎だらけ(11年6月6日)
38)海老蔵頭突きの相手が逮捕されて警察小躍り(11年5月30日)
37)山口組、住吉会が対立解消で末端組員が落ちて行く(11年5月23日)
36)今や山口組をしのぐ半グレ集団の暴れ方(11年5月16日)
35)被災地にボランティアに行ってわかったこと(11年5月9日)
34)山口組が岐路に立つゴールデンウイーク(11年4月25日)
33)震災後、多くの国民が変わったのに変わらない奴(11年4月18日)
32)米のタブロイド紙の漫画に抗議のおかしさ(11年4月11日)
31)日本の暴力団がシチリアマフィアになる日も近い(11年4月4日)
30)放射能をありがたがる人がいることも知っておこう(11年3月28日)
29)お前ら、裸で消防ホースにしがみつけ!(11年3月22日)
28)巨額の予算を浪費している地震学者は税金返せ(11年3月14日)
27)19歳予備校生カンニング事件はなぜ起きたか(11年3月7日)
26)今年10月施行、東京都の暴力団排除条例を読み解く(11年2月28日)
25)鳩山発言とライシャワー文書が物語ること(11年2月21日)
24)銀行がやるべきは中小企業支援ではなく謝罪だ(11年2月14日)
23)相撲協会はどうぞ春場所をおやりなさい(11年2月8日)
22) 何だったのか、角界からの反社排除(11年2月1日)
21)実態が何もわからない検察審査会は足のない幽霊(11年1月25日)
20)村木元局長にも管理者責任はあるはずだ(11年1月18日)
19)最高裁がやっていることは“世襲”と“泥棒”(10年12月28日)
18)絶対に謝らない裁判官という異様な種族(10年12月21日)
17)海老蔵殴打犯は“半グレ”でトクした(10年12月14日)
16)ヤクザの“美的慣習”にメスを入れた大阪府警のやる気(10年12月7日)
15)朝鮮同様にきな臭くなってきた暴力団抗争(10年11月30日)
14)山口組ナンバー2髙山逮捕は手放しで褒められない(10年11月23日)
13)暴走検察を是正するには刑事訴訟法の見直しから(10年11月16日)
12)ネット流出の裏に見える当局の前時代的な情報感覚(10年11月9日)
11)被疑者に権利なしという最高検の高慢と偏見(10年11月2日)
10)悪が悪を裁く皮肉な構造は変わっていない(10年10月26日)
9)暴力団を使った殺しも出てくる検察の闇と腐臭(10年10月19日)
8)尖閣諸島におけるフィクサーの歴史(10年10月5日)
7)ヤクザより始末に負えない半グレ集団が台頭中(10年9月28日)
6)デブの見せ場のどこに公益性があるのか(10年9月14日)
5)年寄りが若者を養う、この国の闇経済(10年9月7日)
4)28万9000頭もの牛や豚をなぜ、皆殺しにする必要があったのか(10年8月31日)
3)国相手のパチンコ訴訟は「身勝手」と言い切れない(10年8月24日)
2)高齢者の所在不明急増のウラで蠢く貧困ビジネス(10年8月17日)
1)角界浄化は望むべくもない、野球賭博の胴元に迫らぬ捜査の奇怪(10年8月10日)

2010年7月7日、野球賭博摘発についての溝口敦のコメント
NHK WORLD ニュースライン(10年7月7日)

2008年7月14日、占い師・細木数子は講談社社長に6億円余の損害賠償を求める裁判について、東京地裁に訴えの取り下げ書を提出した。
講談社と溝口は細木の訴えの取り下げに同意し、次のような和解条項を示して細木と和解した。

講談社は、雑誌出版社として財団法人日本雑誌協会が定める雑誌編集倫理綱領(昭和38年10月16日制定、 平成9年6月18日改訂)に基づき、「雑誌編集者は、完全な言論の自由、表現の自由を有する。この自由は、 われわれの基本的権利として強く維持されなければならない」ことを基本とし、「社会の秩序や道徳を尊重す るとともに、暴力の賛美を否定する」との立場に立ちつつ、「個人及び団体の名誉は、他の基本的人権とひと しく尊重され擁護されるべきものである」ことを自覚し、「真実を正確に伝え、記事に採り上げられた人の名 誉やプライバシーをみだりに損なうような内容であってはならない」ことに留意して、行動していくことを、 ここに表明し、補助参加人(溝口敦)は、同様の指針に沿って、行動していくことを表明する。

2008年3月10日、溝口敦と山口組系山健組組長らは東京地裁で和解した。

・この和解を報じる共同通信の配信記事(08年3月10日)
・東京地裁での和解の概略




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