436)コロナもウクライナも詐欺のためのストリーは日進月歩(22年2月28日)

先日、六本木の飲食店オーナーA氏からなるほどと思う話を聞いた。
A氏は店の新規客から相談というか頼み事を持ち掛けられた。
「お宅の数多いお客さんの中には、自分か身内にがんの人がいるでしょう。そういう人を紹介してくれませんか。100万円ぐらいお礼はできますから」
A氏は聞くなりうさん臭い話と思って、こう反問した。
「がんの人なんか身近にいくらもいるでしょう。他人に頼むまでもなさそうだけど」
「いや、日本の厚労省は保守的だから、外国で実施されているのに、国内では承認していない治療や手術法がいくつもある。日本で施術し、医者から『これ以上の治療はないですよ。退院して自宅で療養して下さい』といわれた患者さんや家族としては、何か手があるはずと探して、外国の医療に行き着くわけ。
私はドイツの先進医療に強力なパイプを持っていますから、そういう患者さんを海外にお世話できる。思い当たる人がいたら、ぜひ教えて下さいよ。お礼ははずみますから」
A氏は話半分に聞いて、「誰か思いついたら、私から電話しますよ」と、この話を打ち切った。
お客の話の真偽は分からないが、しかし病気か何かでワラをもつかみたい人からカネを引き出す方法として、これはよくできた話だと感心した。それで私に教えてくれたわけだが、私も同じように感じた。
世の中には他人の窮状に同情せず、これはカネを引っ張るチャンスだと考える手合いがいる。人の不幸は蜜の味であり、蜜を味わうためには首吊りした人の足も引っ張る。
そのようなとき、たまたま歌手の西郷輝彦さんが2月20日、75歳で死んだ。彼は10年ほど前、前立腺がんの手術を受けたが、17年に再発、オーストラリアに転院し、日本ではまだ承認されていない治療を受けた。一時は全快し、喜んでいたものの、今年に入って急激に体調が悪化したという。
もちろん西郷さんはきちんとした医療機関の紹介でオーストラリアで治療を受けたのだろうから、私が漏れ聞いたうさん臭い話とは無縁だろう。
しかし、詐欺のためのストリーづくりが日進月歩していることは忘れるべきではない。どういうストーリーなら、ターゲットを落とせるか。コロナの感染が広がれば、コロナにどう便乗するか。どう公的なコロナ対策助成金を詐取するか。早晩、ロシアのウクライナ侵攻やガソリン高騰なども彼らのネタになるはずである。
時事トピックを巧みに取り入れ、ターゲットを安心させ、得心させ、カネを出させる。詐欺犯を侮ってはならない。

|